満員電車など、密になりやすい空間での新型コロナウイルスへの感染が危惧されるなか、密を避けた通勤手段のひとつとして、「自転車通勤」が注目されています。また、国も自転車通勤制度の積極的な導入を後押ししていますので、前向きに検討中の企業も多いのではないでしょうか。しかし、自転車通勤制度の導入を検討するにあたり、企業は何を知る必要があるのでしょうか?

今回は、自転車通勤の導入を検討している企業が知っておきたい情報や、導入によってどのようなメリットがあるのかなどを詳しく見ていきましょう。

自転車通勤の現状

はじめに、自転車通勤の現状について調査結果を見ていきましょう。まずは2015年に国土交通省が発表した「全国都市交通特性調査」の結果によると、全国の通勤者のうち自転車通勤をしている人は、15.2%に上ります。このデータは、交通網の整備状況や地形、天候の特性などによって、かなりの地域差があることが考えられますが、既に調査の時点で自転車通勤は一定数があることが分かります。

さらに自転車産業振興協会が調査している自転車販売店での車種別の販売数では、全国的にクロスバイクやロードバイクなどのスポーツ系自転車や、電動アシスト自転車が増加傾向にあるようです。

それはクロスバイクや電動アシスト自転車が楽に運転ができるためだと考えられます。たとえば、クロスバイクは車体が軽く変速段数が多いため、道路の起伏に対応しやすく身体への負担は少なくなります。また、電動アシスト自転車は荷物や子供を乗せながら坂道でも楽に進んでいけるため、男女問わず人気があります。このような車種の多様化は自転車通勤の促進にも影響を与えていることが考えられます。

自転車通勤における4つのメリット

企業が自転車通勤を推奨することによって期待できるメリットは主に4つあります。それぞれのメリットを具体的に見ていきましょう。

通勤手当や固定費の削減

まず大きなメリットのひとつは、「固定費の削減」です。自転車通勤をすることで、従業員の通勤手当の負担の軽減につながります。

今まで電車やバスなど公共交通機関で通勤していた従業員や、クルマで通勤していた従業員に対する通勤手当の負担が、自転車通勤により、1人当たり年間で約5.7万円もの削減が実施できた事業者もあります。

自転車通勤は、実施する人が蓄えているエネルギーが消費され、基本的には金銭的な消費が発生しませんので、通勤手当の削減には大きく影響するでしょう。また、クルマでの通勤者が減ることで、会社で借り上げている駐車場があるなら、その経費が削減されることもメリットになります。

従業員のための駐車場整備は、従業員が多ければ多いほど負担は重くなりがちですが、年間で約100万円もの経費削減につながったケースもあるようです。

時間管理、集中力、など労働生産性の向上

自転車通勤によって、以前よりも健康的な体質に改善され、集中力が持続するなど働く人の労働生産性の向上につながる効果が期待できます。

ある程度の期間、自転車通勤を続ければ自然と体力や筋力が向上することや、クルマや電車・バスでの通勤では気にも留めなかった風景に触れることもできます。自然に触れたり、新しいショップを発見したりしながら、健康的な身体づくりも両立できることで、心身ともに健康的で充実した時間を過ごすことにつながります。

また、健康的な心身を保てるようになることで、時間管理能力や仕事の成果アップなど労働生産性の向上が期待できることは、従業員はもちろん事業者にとってもメリットになるでしょう。

企業のイメージアップ

自転車通勤は、固定費削減などの実利的なメリットも期待できますが、そもそも自転車を利用すること自体が、CO2削減など環境に配慮したエコな行動となります。それを企業が推奨すれば、地球環境に優しい企業として認知されるようになるでしょう。

また、オフィスワークが中心の企業であれば、運動不足になりがちな業務スタイルが従業員の健康を害することにつながり、それが社会問題にもなり得る時代です。それを踏まえて、企業が自転車通勤の促進に取り組めば、従業員の健康に気遣う企業として認知されることや、従業員の満足度も向上させられることが期待できます。

雇用の拡大

自転車通勤は、雇用の拡大にもメリットがあると考えられます。電車・バスなど公共交通機関を利用することが多い場合、通常は求職者にとっては通勤に便利なことが、企業を選ぶ条件のひとつになります。

しかし、自転車通勤を積極的に推進している企業ならば、「最寄り駅まで歩いて何分でいけるかな?」など、電車通勤を前提にした通勤ルートにこだわる求職者が少なくなることも考えられます。条件によっては、電車・バスなどよりも通勤時間を削減できる可能性もあります。

また、自転車通勤は、子育てしながら働く女性にもメリットがあります。保育園や幼稚園などに子供を預けている家庭では、通勤途中に送迎ができると大幅な時間短縮になりますので、朝の10分でも時間が貴重な女性にはとても効率的な通勤習慣になるでしょう。

送迎はクルマでも可能ですが、子供を預けている施設によってはクルマを容易に停車しておけないケースも多いでしょう。そのため、送迎のために近くのコインパーキングを利用しなければならないことも考えられますが、自転車の場合は、施設の敷地内などに駐輪できるケースがほとんどでしょう。

企業の成長力を加速する自転車通勤制度

大人になってからは、自転車に乗る機会が少なくなった方も多いかもしれません。しかし、いざ利用し始めると、自由に動ける自転車の便利さに改めて気付きます。それを多くの従業員が体感でき、ひいては労働生産性の向上や新たな人材確保による企業の成長も期待できる可能性があることが、企業にとって自転車通勤を導入するメリットといえるのではないでしょうか?

新型コロナウイルスによって偶然にも見直されている自転車通勤ではありますが、この機会に率先して取り組んでみてはいかがでしょうか。

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<参考文献>自転車活用推進官民連携協議会(国土交通省)発表「自転車通勤導入に関する手引き」より