MTBハンドルバーセットアップ講座ー2
「セットアップと調整」:コックピットセッティング

バンピーなシングルトラックや急な下り坂でのMTBライディングにおいて高い安定性とコントロール性を得るためには、しっかりと握ることができブレーキレバーやシフトレバーを操作しやすいハンドルバーポジションが非常に重要です。

しかし、あなたのライディングスタイルや体格、コックピット周りのセッティングに合わせて最適なハンドルバーを見つけることは決して簡単とは言えません。

前回「セットアップ講座―1」では、ハンドルバーの形状や幅の違いによる違いや選び方の基本を学びました。

そして今回の「セットアップ講座―2」ではトレイルをより早くスムーズに走るためのブレーキレバーやシフトレバーのセッティングについて説明してみます。

 

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セットアップ第二弾は、コントロール性能をアップするコックピットセッティング

 

必要な工具を準備する

適切なポジションとコントロール性能を得るためには、ハンドルバーを正しく取り付けてセッティングすることが大切です。

そのためには確実な作業が可能な信頼できる工具を用意しましょう。

ほとんどのバイクのコックピット周りではアーレンキー(六角レンチ)、稀にT25ヘキサロビューラ(トルクスレンチ)を使って行う作業がメインとなります。

さらに、適切なトルク管理ができるトルクレンチを用意すれば、固定力不足によるパーツのズレ、締め込み過ぎによる破損といったトラブルを回避するのに役立つでしょう。

 

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ハンドルバーのセットアップ

前回記事「セットアップ講座―1」で選んだ自分の体格や用途に合ったハンドルバーと工具の用意ができたら、実際に取り付けていきましょう。

取り付けの基本は、まずハンドルバーの中央がステム中央部と揃っていることが大切です。

たいていのハンドルバーには中央部分を表すマーキングがされていますので、ステムの中心位置に正しく揃っているかを確認してください。

 

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次にハンドルバーを少しずつ回しながら角度を調整していきます。

セットアップ講座―1」で説明したように、ハンドルバーというのは真っすぐではなく「アップスイープ(バー中央部から両端に向かってどれだけ上方向に曲がっているか)」「バックスイープ(ハンドルバーがあなたの体の方向、手前側にどれだけ曲がっているか)」そして「ライズ(両端が垂直方向にどれだけ上がっているか)」という要素が組み合わされた形状をしています。

もし、ハンドルバーを前方に回し(倒し)過ぎた場合、本来のバックスイープはアップスイープに変換されてしまい、手前(体)方向への曲がりが無いバーとなってしまいます。

逆にバーを後方に回し過ぎた場合でも、ライズが上方向ではなく後ろ方向に作用するので、バー両端の位置が後方、言い換えれば体に近くなり過ぎてしまう、といった問題が発生します。

 

「まずはハンドルバーにプリントされたロゴが地面と垂直、つまり正面を向くようにする、というのもひとつの目安になるでしょう。そこを基準として自分が快適と思える角度を探していくのです」

PRObikefitting.comのプロダクトラインマネージャー Chris Jacobson はこうアドバイスします。

あくまで大切なのは、腕を自然にバーに伸ばして乗車姿勢をとった時、肘に適度な余裕があるリラックスしたニュートラルポジションが得られることです。

ハンドルの角度が定まったらステムのフェイスプレートのボルトを締めて固定します。

4ヶ所のボルトがある場合、Xの文字を描くように対角線上にあるボルトを交互に締めていくのが良いでしょう。(ステムの取り扱い説明書を確認してください)

最後にフェイスプレートとステム本体の上下にできる隙間が均一になっているかを確認しておきましょう。

 

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ハンドルバーが正しく固定されたら続いてグリップを取り付けます。

「もしあなたがエルゴノミックデザイン系のグリップを使うのならば、必ずハンドルバーのセッティングを済ませてからグリップを取り付けて角度を調整してください」Jacobson は言います。

「ライディングポジションをとった時、レバーに伸ばした指や手首に負担の掛からない、自然な角度になるようにします。友達に支えてもらったり壁を使いながら微調整していくのも良いでしょう」

正しくセッティングされたグリップはバイクのコントロール性を高めるだけでなく、手や手首の疲労を軽減するのにも有効です。

 

 

レバー類のセットアップ

ハンドルバー周りのセッティングが固まったら、次にブレーキレバーをセットします。

まず覚えておいてもらいたいのは、進化した現代のMTBブレーキではワンフィンガーでのブレーキングが基本となるということです。

一本の指で強力な制動力が得られるので、バイクコントロールのためにはより多くの指でハンドルバーを握っておくことが大切になります。

よって最適なブレーキレバーポジションとは、バーを握ってニュートラルなライディングポジションをとった時、手をずらすことなく人差し指が自然にブレーキレバーに掛かる位置ということになります。

 

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左右方向の位置を調整した後は角度を見ていきましょう。

好みの問題を抜きにすれば、あなたが肘を曲げてライディングポジションをとった際に、肩から腕、そして手まで、各関節がスムーズに連動しながら可動できる角度を見つける必要があります。

それはレバーへ自然に指を伸ばした時、人差し指と親指の間にできるV字の部分で体を支えている状態だということがわかると思います。

 

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もしブレーキレバーを地面と垂直方向、下に向け過ぎてセットした場合、手首は前方に向けて折れ曲がり、グリップを握る力が弱くなってしまいます。

逆に地面と水平方向、上に向け過ぎた場合は、手首は甲側に折れてしまい肘を適度に曲げた自然なポジションをとることは難しくなります。

そして、理想的なポジションというのはあなたが主にどんな場所を走るかにも左右されますし、さらに言えば結局のところ個人の好みによっても変わってくるとも言えます。

 

「私の場合、急なダウンヒルなどエクストリームなシチュエーションを重視してブレーキレバーをセッティングします」

シマノのマーケティング担当 Joe Lawwill は説明します。

「平地ならばハンドルバーへと伸ばした腕の延長線上にブレーキレバーを持ってくるというセッティングが基本になります。 しかし急激な下り坂ではどうでしょうか。 重心が前に行き過ぎるのを防ぐため大きく腰を引いて低いポジションをとり、必然的にハンドルバーをより後ろ側から握っているような形になっているかと思います。 だから私はこうした場所を走る必要がある際は、ブレーキレバーをいくぶん上向きにセットしています」

 

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ブレーキレバーの固定にはトルクレンチの使用をおすすめします。

確実な固定を行うという意味合いもありますが、同時にオーバートルクによる締め込み過ぎを回避し、クラッシュ時にレバーが多少回転して衝撃を逃がすことでブレーキレバーの破損を防ぐことにも繋がります。

 

ブレーキレバーのセッティングが決まったら、残るは左側のドロッパーポストのレバー、右側のシフトレバーということになります。

ハンドルバーを確実にグリップしながら、親指もしくは人差し指でそれぞれのレバー操作が快適に行える位置に取り付けるようにしてください。

 

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自分に合ったハンドルバーのチョイスから、コントロール性を高めるセットアップまで、MTBのコックピット周りのセッティングはなかなかに難しく奥が深いものです。

しかし、あなたがクロスカントリーレーサーであれグラビティ系ライダーであれ、バーを確実にグリップできることとレバー類へのアクセスのしやすさは最も重要です。

時間は掛かるかもしれませんが、自信を持って且つ楽しみながらトレイルを走ることのできるセッティングを見つけ出してみてください。

「選択肢が多すぎて困惑することもあるかもしれません」Jacobson は付け加えます。

「でも、自分が何を求めているかということを意識しながら進めてみてください。 自ずとすべきことが見えてきて、その結果としてこれまで以上にライディングを楽しめるようになるはずです」

 

 

 

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