ちょうどいいスピード感。だから視覚と聴覚に心地よい
風を切って走る爽快感は、自転車に乗ったことがある人なら誰しも想像がつきますよね。同じように風を切りながら走る乗り物でも、たとえばオートバイではスピードが速く、景色を眺めるというよりは、景色が過ぎ去って行くイメージ。エンジン音が響く中、鳥のさえずりに耳を傾けることは難しいでしょう。
また同じ有酸素運動の代表ともいえるウォーキング。自分の歩調で、じっくりと周りの状況を味わえるのはウォーキングですが、スイスイ~っと視界が流れていく体験や、坂道を下るときのスピード感、重力の変化はウォーキングでは味わえません。

そう考えると、景色の移ろいを目・耳で捉えながら、同時に流れる爽やかな疾走感は、自転車特有の気持ちよさであると言えそうです。
▶感性工学の研究者である井口教授の解説をチェック。「自転車の解放感はジブリ映画の浮遊感に通ずる」とは?
目で、耳で、肌で。感性を刺激する自転車
“自転車そのもの” に目を向けると、もっと「気持ちよさ」のコアな理由が見えてきそうです。
◆Color[ 色 ]◆

ファッションやメイクのように、”色” で楽しむ自転車。フレームのカラーリングは、自転車の印象を決める大きなポイントですが、その色選びにも個性が見えるもの。日々のパートナーが “お気に入りの色をまとった自転車” なら、朝から少し気分もあがりそう。
◆Material[ 素材 ]◆
フレーム以外にも、自転車の印象を左右するパーツがサドルやハンドルです。ハンドルの幅や、サドルの高さなどの簡単に自分に合わせられるのも自転車のいいところ。更に、サドルをやグリップといったパーツには本革製のモノを取り入れてみると、乗るたびに自分に馴染んでいくクラシカルな1台に仕上げることもできます。
見た目のみならず、自転車と人との接点となるサドル・ハンドル・ペダルは触感にこだわって、小さな「気持ちよさ」 を積み重ねて、自分だけの一台をゆっくり作り上げるというのも、自転車の楽しみ方のひとつです。

◆Gear[ ギア ]◆
ペダリングと気持ちをつなぐスイッチとも言えるギア。ゆっくり気持ちよく、軽いペダリングで街を散策してみたり、ギアを重くしてスピードを上げながら運動パフォーマンスを調整してみたり。自分の気持ちにあわせて変速することはもちろん、気分をあげるためにギアを調整することだってできるんです。
◆Coasting[ コースティング ]◆
足を止めた状態でそのまま滑走することを「コースティング」と言いますが、このときに「チチチチ…」と聞こえるのがラチェット音。耳へと自然に届いてくるそんな機械音も、メカの操作性を実感させます。乗り物との一体感を楽しめる、自転車ならでは響きですね。
自転車はどのテンポでも気持ちいい?ウォーキングと比べてみよう
自転車の気持ちよさを詳しく解明するために、もっともメジャーな有酸素運動であるウォーキングと、サイクリングを比較した実験結果を紹介しましょう。

速い・普通・遅いの3種類のペースで、自転車・ウォーキングとも各30分間実施。運動中の気分変化を「非常に不快~非常に快適」までの7段階で3分ごとに記録し、さらに運動後の気分を形容詞で表現してもらいました。
この結果をまとめたものがこちら。

注目したいのは、サイクリングがどのテンポも同じエリアにいるということ。たとえば横軸で見ると、右に行けば行くほど快適であると意味していますが、サイクリングはどのテンポでも快適と感じているのがわかりますね。
また「速こぎ(ペース130)」の近くには “進む” や “目が覚める” といった表現があり、いっぽう同じペースの「速歩き(ペース130)」では “窮屈な” や “心理的に疲れる” といった表現が近くにあります。この理由は明らかになっていませんが、そもそも自転車は歩行よりも移動スピードが速いため、風を受けてより爽快な気分となっていることが影響していると考えられます。
▶さらに「自転車は快適性が持続する」という結果も。心拍数の変化の違いは?
通勤サイクリングは気分の切り替えに
この “通勤サイクリングラボ” でも以前から取り上げているように、自転車通勤は体力向上にとどまらず、気分をスッキリさせるという一面があります。自転車通勤での精神的な変化を調査した結果がこちら。

東京在住の会社員の皆様に協力いただき、自転車通勤前後の心理データを収集しました。その結果、自転車通勤した日は出社後にやる気に満ちた「イキイキとした状態」になっていることが明らかに。仕事に前向きになり、作業効率の向上も期待できます。
加速していく自転車の好スパイラルを実感しよう

自転車の気持ちよさの裏には、単にスピードに乗る 爽快感だけにとどまらず、流れる景観や自然の音など、無意識のうちに五感で得ている要素があることがわかりました。その結果として、持続する快適性や、気分をスッキリさせる覚醒効果につながり、それがさらに仕事効率アップへと派生していく。自転車のひと漕ぎから始まる好スパイラルの効果はまだまだありそうですね。
意識的に自転車の気持ちよさを感じ取ってみると、自転車の新たな一面を発見できるかもしれません。
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