だんだんと蒸し暑い日が増え、じんわり汗ばむ季節がやってきました。自転車通勤やサイクリングでもたくさんの汗をかきますね。放っておくと、ベタベタとして不快な汗ですが、実はこの汗のおかげで、長時間の運動が可能となっていること、ご存知でしょうか。今回は、この季節の必須な汗対策と汗の特性や重要性について理解を深めてみましょう。

自転車通勤時の汗対策

水分補給

「のどが渇いた」と感じるころには、すでに身体は脱水状態に陥っています。特に運動前、そして運動中もこまめに水分補給することを意識しましょう。水分の量は運動の内容や体格によって異なるので、自分の発汗量を知っておくことが大切です。発汗量=「(運動前体重-運動後体重)+飲水量」となるので、時間当たりの発汗量を算出してみると良いでしょう。

スポーツドリンク等でナトリウム補給

汗にはナトリウムが含まれています。体液は0.9%程度の食塩水と同じ浸透圧なので、大量の水だけを摂取してしまうと、体液のナトリウム濃度を薄めてしまうことに。そして、体液が薄まってしまうと、体は自然と「これ以上水は必要ない」と判断して水を飲みたくなくなり、気づかぬうちに熱中症になってしまうという危険性があります。 日本スポーツ協会では、水分補給には真水ではなく0.1~0.2%程度の食塩と糖質を含んだ飲料を推奨しており、特に激しい運動をする場合には4~8%程度の糖質を含む飲料がいいとされていますので、運動強度に見合ったスポーツドリンク等でこまめにナトリウムを補給することをおすすめします。

ニオイ予防

ご存知でしたか?実はかいたばかりの汗が無臭だということ。

では、あの汗くさいと言われるニオイの正体は?

それは、汗や皮膚の汚れをエサとする細菌から出るニオイ。細菌が繁殖してニオイを出す前(運動後1時間以内)に、タオルやボディーシートで拭き取るなどすることでニオイを防ぐことができます。

水で濡らし、硬く絞ったタオルを前の晩に凍らせておいたものを準備しておくと、自転車通勤後やサイクリング後に程よく解凍されて、クールダウンしながら汗を拭きとることができます。冷たい濡れタオルで汗を拭き取ると、乾いたタオルに比べ、更なる発汗を防ぐ効果もあります。

汗対策インナー

自転車通勤時には通気性、速乾性、吸湿性に優れ、防臭効果のある素材のウェアを選ぶと良いでしょう。 速乾性、通気性の高い素材はポリエステル などの合成繊維です。

あまり知られていませんが、夏用の薄いウールのインナーは、吸湿性が高く、防臭効果があり特におすすめです。 可能であれば、通勤後に着替えることがベストですが、難しい場合には服を着たまま脱げるタイプの汗取り用インナーも市販されています。

汗の特性や重要性

人間は発汗能力が高い

私たち人間のように、マラソンのような長距離を走ることができる哺乳類はあまりいません。それが可能な理由は、体温を下げるために、大量の汗をかくことができるから。このように発汗能力の高い哺乳類は、人間と馬などの限られた種類しかいないと考えられています。打ち水の原理と同じように、汗が蒸発する時の気化熱により体内の熱を逃がして体温を下げています。

もし汗をかかなかったら?

体重70㎏の人の場合、汗を100mlかくと、体温が約1度上昇するのを防ぐと考えられています。夏の炎天下で10分歩くと約100mlの汗をかくと言われていますので、まったく汗をかかなかったら、20分で体温が2度も上昇してしまうことになります。発汗は生命を維持するための、とても重要な機能だと言えます。

汗のもとは?

汗の原料となるもの、実は血液です。汗は汗腺で作られます。汗腺の分泌部というところで、血液から赤血球などを取り除いた、血しょうという液体から汗が作られています。血しょうには、たくさんのミネラルが含まれているため、それらが体外に流出しないよう、汗腺の導管部というところでろ過されています。

良い汗をかくには?

汗腺のろ過機能を高めれば、ミネラルの損失が抑えられます。ろ過機能を高める方法は、“汗をたくさんかくこと”。運動をよくする人の方が、汗に含まれる成分が薄いことが分かっています。汗を抑えるのではなく、定期的な適度な運動で、上手に汗をかいて汗腺を鍛えましょう。

いかがでしたか?

汗をコントロールすることはできませんが、十分な休養と、十分な水分補給、そして自転車通勤を活用して定期的な運動を実践し、良い汗をかきましょう

マインドスイッチでは、自転車や自転車通勤による健康的で豊かなくらしを実現するための情報をこれからも皆様にお届けしてまいります。

<参考文献>

小川徳雄著『汗の常識・非常識』講談社

環境省『熱中症環境保健マニュアル 2018』

日本スポーツ協会『熱中症予防のための運動指針』