暑い季節がようやく終わりを告げ、運動するのにちょうどいい気候になってきました。最近、体力が落ちてきたように感じる…何か運動を始めたい!だけど時間がとれないし、いきなりハードな運動もちょっと心配。そんな人へ、「ニコニコペースの通勤サイクリング」のご提案です。

30~40代で実感し始める「体力の衰え」

年齢を重ねてもパワフルに働きたい。働き盛りといえる30~40代ですが、忙しい日々の中で、体力の衰えを如実に実感していく世代でもあります。

・遅刻!取引先へダッシュで息切れ

・階段を登りきる前にハァハァ…思わず膝に手をついてしまった

・子どもの運動会で久しぶりに走ったら足がもつれた…

ドキッとした人も多いのではないのでしょうか。人は誰しも、年をとるにつれ体の動きが悪くなります。さらに日常生活がずいぶんと便利になった現代では、活動量自体が減っています。体力が低下して疲れやすくなったとき、”動かなくてすむ” 現代人は、どんどん動かなくなる。当たり前のようにエレベーターを使い、ちょっとした移動もタクシーに乗ってしまう。日用品の買い物だってネットで済んでしまう時代です。

疲れるから動かなくなり、さらに体力が低下する。そんな悪循環に陥ってしまっていませんか。

「ハァハァ……あれ?昔はもっと走れたはずなのに…?」

仕事、家事、育児…。平日も休日も忙しい働く世代

体力アップのためにも運動しなければ。頭でわかっていても、運動する時間をなかなか作れないのが忙しいビジネスパーソンのツライところ。

30~40代といえば、平日は仕事、帰宅後も家事や育児に時間をとられるケースも多いでしょう。ジム通いや新しいスポーツに挑戦するのは、意外とハードルが高いのが現状。

共働きが普通となった現代。男性も女性も同じように働き、家事・育児をする。

そんな働く世代にこそおすすめなのが、通勤の時間で運動を兼ねることができる通勤サイクリングです。ただ日常的に使われる身近な乗り物である自転車。もしかしたらこんな疑問を持つ人もいるのでは?

「通勤時間に自転車を漕いだぐらいで運動になるの…?」

実は、スピードを落としたゆっくり走行でも十分な運動効果が期待できるんです。

スローだからこそ。通勤サイクリングが立派な運動になる理由

体力に自信がなくても無理なくすぐに始められて、ツラくないから継続できる・習慣になる。この好スパイラルを実現するのがスローな運動=ニコニコペースです。

ニコニコペースとは、笑顔でおしゃべり出来るぐらいの運動強度のこと。少し早く歩く程度、自転車なら息が上がらない程度のペダリングにあたります。

周りの景色を楽しめる、余裕をもった楽ちんニコニコペース

同じ有酸素運動であるウォーキングと比べても、自転車は脚への衝撃や負担をかけずに長時間運動できるというメリットがあります。

一つの運動を長く続けることは体力づくりにはうってつけ。

じっくり長く続けることで、自然と心肺機能が鍛えられ体力がアップするのです。

通勤時間を利用すればまとまった時間を確保できるため、十分なニコニコペースの運動ができます。通勤前に体力を消耗しては意味がありませんが、ニコニコペースのサイクリングなら、負担になりにくいので通勤時間の利用が可能なのです。

後ほど詳しく紹介しますが、ニコニコペースの運動は血流アップや緊張緩和効果も期待できます。通勤サイクリングを取り入れれば体力づくりに加え、リラックスした爽快な気分にもなれるでしょう。

▶自転車運動がもつ実力を知る

→「体力に自信がない…ならば自転車でラクに運動。

ニコニコペースの運動で得られる効果

体力維持と同じく、体重や脂肪を落としたり、血糖値や血圧を正常値にしたりするための運動も、実は「ツラくない」有酸素運動だからこそ得られる効果があるのです。ニコニコペースで行った3つのデータを確認してみましょう。

血圧が正常レベルに

まずは血圧の推移から。このグラフは12名の高血圧患者の方に行った運動療法の結果です。

・1日1時間

・週3回

・自転車エルゴメーター(室内固定式の自転車運動器)での運動

この条件のもとニコニコペースで運動を続けていくと、運動開始後4週目に血圧が下がり、その後安定。10週目の体力測定では体力の向上が見られたため、ニコニコペース内で強度をアップ。運動を継続したところ、さらに血圧が下がりました。

もちろん個人差はあるものの、ニコニコペースの運動で高血圧状態が改善される効果が判明。さらにおもしろいことに、高強度の運動(最大酸素摂取量70%超)よりも、軽い運動(最大酸素摂取量40〜60%)の方が降圧効果を期待できるのだそうです。

高血圧の場合、運動するとよけいに血圧が上がるのでは?と心配になる方もいるかもしれません。確かに運動をすると、一時的に血圧は上昇しますが、ニコニコペースだと高くなりすぎることはありません。しかし続けているうちに、必要となる酸素や栄養を筋肉に運ぶために、血管が広がるので血圧は下がります。
とくに自転車のペダルを漕ぐ回転運動は、心臓から大量の血液を循環させるため、血管の柔軟性や血管の働きを活発にするといった、循環機能そのものの向上にもつながります。
またニコニコペースの運動なら、血管を緊張させ血圧を上げるもととなる、交感神経の緊張も緩められるのです。
結果「運動すると血圧が上がる」「運動後に血圧が上がる」といった心配はなく、ニコニコペースの運動は降圧効果を期待できるというわけなのです。
※重症の高血圧や心疾患を伴っている場合は必ず医師に相談しましょう。

善玉コレステロール値が上昇!

次は善玉(HDL)コレステロール値をチェック。健康診断の結果で目にする機会も多い項目ですね。いわゆる「コレステロールが高い」というのは、悪玉コレステロールのことですが、脂質異常症などがある人は悪玉コレステロールが高く、善玉コレステロールが低い傾向にあります。また健康な人ほど善玉コレステロールは高く、悪玉コレステロールが低いことが多いようです。

善玉コレステロールには余分な悪玉コレステロールを減らす役割があるので、悪玉コレステロールを下げるためには、善玉コレステロールの増加が欠かせません。 高血圧患者に、9カ月にわたってニコニコペースの運動をしてもらったところ、特に6カ月後と9カ月後に善玉コレステロールの数値が上昇する結果に。ところが運動を中止した1カ月後には数値が低下。善玉(HDL)コレステロールとニコニコペースの運動との関連性が示唆されています。

血糖値の数値も改善

運動中断で数値が変動するのは血糖値の推移でも見られます。有酸素運動には血糖値を下げる働きのあるインスリンの反応を改善させる効果がありますが、この調査でも運動開始後から半年以内には糖尿病の指標であるHbA1cが正常値まで下がっています。ところが運動を中断したところ上昇傾向になったため、運動を再開して糖尿病の基準以下まで改善しました。

これらの結果から、ニコニコペースが生活習慣病予防につながることは明らかですね。無理なく始められてラクに出来る運動も、その効果は侮れないようです。

ニコニコペースって具体的にはどの程度?自転車なら10~15km/hでOK

ニコニコペースとは具体的にどの程度なのか。「笑顔で会話ができる」を全体像から把握できるよう区分した図でチェックしてみましょう。

安静時のレベルを「6」として、10~12の “楽である” と感じる部分がニコニコペース。感じ方は人それぞれです、自分にとってのニコニコペースを見つけてみましょう。

自転車通勤 × ニコニコペース:3つの実践ポイント

これから自転車通勤にチャレンジしたい方に向けて、通勤サイクリングでのニコニコペースの大まかな目安になるよう、実践ポイントをご紹介します。

①まずは片道30分を目指そう

ポイントは距離よりも時間をベースにすること。ゆったりサイクリングだから、たとえ短い距離でも時間をかけてOKです。

片道30分、往復で1時間を目安にしてみると良いでしょう。

自宅から最寄り駅・もしくはひとつ先の駅までの距離をゆっくり走る、最初はそれで十分です。

②軽めのギアで軽快に

変速機付きの自転車であれば、さらに軽快に走ることができます。上り坂や向かい風でペダルが重くなったら、変速してツラさを大幅に軽減。

軽いギアはペダルを踏んでもスピードが出ない分、クルクルと軽やかなペダリングになり、発進時や上り坂に適しています。反対に重いギアはペダルを踏むと、グンっとスピードが出ます。

最初は軽めのギアでゆっくりラクに、軽快に走りましょう。

③スピードの目安は10~15km/h

ツラさを感じない運動強度で行うスローサイクリングでは、速さの目安は時速10〜15㎞程度です。

これは少し早く歩くのと同じくらいのペース。息が上がらないので、体力も持続しやすくなります。

②にあるように、軽いギアに合わせてクルクルと軽快にペダルを回せば、脚の張りも感じにくいはず。

最初はこの3つを目安にして、自分のペースで走ることに慣れましょう。体力がついてくれば、同じニコニコペースでも自然とスピードが上がってきます。そうなれば運動効果を高めるチャンス。距離を延ばしたり、頻度を上げてみたりすることで、通勤サイクリングの幅もグンと広がります。

スローな通勤サイクリングで無理なく運動習慣をつけよう

体力に自信がなくても、気軽に始められる自転車通勤。毎日必ず乗らないと効果ナシ、そんな縛りもありません。週に数回からでも、ちょっとした気分転換として毎日の通勤に変化を与えてみてはいかがでしょうか。

通勤サイクリングに慣れてきたなと感じたら、コースを変えてリフレッシュ。いくつかコースを発掘しておけば、その日の気分でチョイスする楽しみもできます。

スローサイクリングだからこそ景色にも目を向けやすく、季節の流れを肌で感じられるように。1年を通して、自転車が毎日の通勤に彩りを与えてくれるはずです。

▶今回の記事のベースとなった、「スロージョギング」メソッドの開発者である田中先生の解説記事はこちらから

→「頑張らない「スロー」な運動がいい理由。