日本では2018年6月に自転車活用推進計画が閣議決定され、施策のひとつとして自転車通勤の促進が盛り込まれています。国内では大きく動きだした流れではありますが、諸外国の中にはすでに多くの施策が実行され、自転車通勤の促進を実現している国もでてきています。
新型コロナによって、世界的にも自転車通勤を実施する流れが起きていることもありますが、継続的に健康長寿社会を実現する手段として、どのように自転車通勤を促してきているのか、成功事例を参考に自転車活用推進のヒントを探ります。
INDEX
イギリスにおける自転車活用推進の背景
主要大都市(ロンドン)の交通手段について
1870年代にアスファルト舗装が始まったイギリスは、道路の整備が早い段階で完成し、道路利用が世界で最も進みました。上記グラフをみると他地域に比べて、ロンドンはクルマの利用が少ないですが、それでも3分の1を占めます。通勤手段としても30%弱がクルマと回答しています。
自転車活用推進の背景としては大きく3点あり、
1) 交通渋滞の緩和(congestion)
2) 道路の安全性向上と地域住民の健康維持(safety and health)
3) 都市の持続可能性と環境問題対策(sustainability and the environment)
とりわけロンドンのラッシュアワーは交通渋滞がひどく、市街地へ入るクルマの量を減らすために2003年から渋滞税を課して、流入量を制限してきた経緯があります。
また、イギリス全土で通勤手当は企業から支給されてません。
自転車通勤者のニーズ、始めたきっかけ、モチベーション
2003年の渋滞税導入と2005年の同時多発テロをきっかけに自転車を認識し、2008年ボリス・ジョンソン市長就任、2010年の戦略的計画「ロンドン自転車革命」発表、2012年ロンドン五輪と自転車優遇政策が継続して施行されました。
インフラの整備が目覚ましく、スーパーハイウェイや構造分離の通行帯が増えたことで、サイクリストたちは歓迎されていると認識しています。2020年はコロナ禍でソーシャルディスタンスが話題となり、より一層自転車通勤を後押ししています。
自転車通勤者への優遇措置について
自転車購入補助政策
イギリス連邦政府の取り組みとして、1999年にCycle to work schemeとして25-39%安く自転車が買える(購入補助)制度を開始しました。現在も続いています。
以前は1,000ポンドまで(約13~14万円)の制限がありましたが、現在は制限も取り払われており、高級価格帯のバイクへの誘引策も奏功しています。
自転車スーパーハイウェイをはじめとしたインフラ整備
ロンドンにおける自転車革命の政策の大きな柱は、当時400箇所のポートと6000台準備したレンタサイクルと上図の中心市街地と近郊都市間を結んだ「自転車スーパーハイウェイ構想」です。この整備により自転車利用者が70%増加し、そのうち80%が自転車通勤利用者と伝えられています。
参考:欧州各国の総合的な都市交通計画における「自転車」について
また、2020年に歩行者と自転車の通行空間整備へ、20億ポンド(約2,648億円)を拠出することに。
結果、自転車通勤利用者は増加したか
数字は百万人単位なので2009年が50万人、2018年が70万人で43.8%の伸びを示しています。他の交通手段と比較しても、自転車利用者の伸びが最も高いことが分かりますね。
2000年を100とした時の過去20年間で見ると、自転車の利用率が最も伸びており、ロンドンではクルマの利用者(運転者として)と、バス乗車が減っていることが分かります。
まとめ
この10年で急速に自転車通勤者を伸ばしたロンドン。社会的な背景はありますが、スーパーハイウェイなどの安全な走行環境の確保、および利用を促進する消費者への自転車購入補助などは、これから日本でも自転車活用を促進する上で、学ぶべきものがあります。
マインドスイッチでは、自転車や自転車通勤による健康的で豊かなくらしを実現するための情報をこれからも皆様にお届けしてまいります。
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