過去に自転車通勤にトライしてみたものの、『梅雨どきにサイクリングを休んでそのまま…』『仕事が繁忙期でいつの間にか通勤サイクリングをやめてしまった』など、いつしか止めてしまうケースは多いです。

また再開したいと思いつつ、なんとなくそのままに日々を過ごしているなら、「スモールチェンジ」を試してみてください。出来る範囲から運動を取り入れ、少しずつやり方や運動量を変えていく「スモールチェンジ」で、通勤サイクリングを「はじめる」「つづける」が実現しやすくなります!

▶本記事のベースである健康心理学・応用健康科学専門の竹中教授の解説はこちらから。

 →「運動をはじめる、続ける「仕掛け」とは?!

あなたはどのステージ?今の状態をクリアにしよう

まずは上記のチャートであなたのステージをチェックしてみてください。

いかがでしたか?一般的には「前熟考ステージ」「熟考ステージ」「準備ステージ」に属している人が多いようです。

◆前熟考ステージ:まったく運動をする気のない人

◆熟考ステージ:まだ運動を行っていないが、そのうちはじめようと思っている人

◆準備ステージ:やりはじめたばかり、あるいは不定期で運動をしている人

運動習慣が定着している・定着し始めてくると「実行ステージ」と「維持ステージ」にステップアップします。

◆実行ステージ:運動を習慣的に行ってまだ6カ月以内の人

◆維持ステージ:6カ月以上継続できている人

通勤サイクリングで考えてみましょう。「自転車通勤を続けていますか?」という問いに、自信を持って “ハイ!” と言えないのはおそらく「前熟考」「熟考」「準備」ステージの人たちですね。

いつまでたっても始められない・続かないのは、自分の意志が弱いから……と思いがちですが、大丈夫です。そもそも運動は「始められない」「続けられない」ものなんだとか。

新しいスポーツウエアを購入したり、活動内容を記録できるスマホアプリをダウンロードしたり。準備万端で始めた運動を「いつのまにか止めてしまっていた」というケースは、多くの人が経験しているのでは。

健康心理学・応用健康科学専門の竹中先生によると、最初は「がんばるぞ!」と気合い十分にウォーキングやジョギングなどの運動をはじめても、何らかの理由で止めてしまう人がほとんどなのだそう。通勤時間を使って運動しよう!と始めた自転車通勤も、『雨で通勤サイクリングできない』『仕事が忙しくなって無理』といったさまざまな理由でいつしか止めてしまうケースは、思いのほか多いのです。

まず “できることに取り組む” が、スモールチェンジの第一歩。

行動や習慣を劇的に変えることは難しいし、そう簡単にはできないものです。でも心のどこかで「やらなきゃ」と思っている。その心と行動のギャップを埋めるヒントが、竹中先生が提唱されている「スモールチェンジ」という考え方です。

運動したい、やらなきゃと思っているのに、ルーティンをこなす単調な毎日を送っている。習慣を劇的に変えることは、忙しいビジネスパーソンはなおさら難しい。

いきなり運動をはじめるのが難しい「前熟考ステージ」の人は、運動がもたらすメリットを理解し、家事を積極的に行うなどの活動量を上げる工夫を取り入れます。また、近いうちに運動をはじめようと思っている「熟考ステージ」の人は、1日5分でも歩いてみる、テレビを見ながら椅子に座って膝の曲げ伸ばしを行うなど、ほんの少しでもできることを行うというスタートによって、「小さな変化」=スモールチェンジを自分に起こしていきます。

実行ステージ・維持ステージにいるなら安心?

実は「実行ステージ」「維持ステージ」に当てはまるから安心かと言うと、そうとも言い切れないのです。特に実行ステージの人は運動をはじめてまだ半年足らず。寒さや雨、仕事の繁忙期など、さまざまな理由で準備ステージに戻ってしまい、そのまま止めてしまう状況になりがちなんです。せっかく定着しだした運動習慣を途切れさせてしまうのはもったいない!このステージであっても、逆戻りさせない働きかけや意識付けが重要になってきます。

「続ける」「止めない」の連続で、運動を習慣へ

運動をはじめられるようになったら、次の目標は「続ける」ことになります。たまにしか行っていない運動の頻度を上げることは意外と難しいもの。まずは週に何日、どのくらいの運動を行うかという目標を立て、遂行していきます。

ここでやる気を保つためにやっておきたいのが日々の運動内容の記録。自転車運動なら距離やコース、時間などを記録し、「こんなにも走れるようになっている」という自覚を促すことで運動を当たり前のものにしていきます。スマホアプリやサイクルコンピューターなどを上手に使って、サイクリングを視覚化すると良いでしょう。もっと簡単なやり方なら、自転車に乗った日はカレンダーに〇を入れて記録するのも、月全体の運動の度合いがわかるので役立ちます。

こうして運動が習慣化したら実行ステージに移り、今度は「やめない」ことが目標に。運動を休みたいという誘惑や、生活環境の変化などによって準備ステージに戻ってしまうケースは多いです。運動の内容に変化をつけたり、服やシューズを新しく自転車通勤に合ったものにするなどのスモールチェンジで気持ちにメリハリをつけ、飽きない工夫をすることが重要になってきます。

通勤サイクリングなら、ルートに変化をつけてみるのもおすすめ。

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運動を習慣化するためのステージUPプラン

現状のステージがクリアになったら、ステップアップのための小さなアクションを起こしていきましょう。各ステージごとに、スモールチェンジのコツをご紹介します。

「前熟考」から「熟考」へ:まずは活動的な生活をはじめる

☑ 運動を行うメリットを考えてみましょう。自転車通勤のメリットはこちらをチェック。

☑ 運動できない理由は何でしょう。

☑ 会社では階段を使うなど、活動機会を増やしましょう。

「熟考」から「準備」へ:運動をはじめる

☑サイクリングや軽い筋トレといった軽めの運動を少しずつはじめましょう。

☑運動を続けて身体が変化している少し先の自分をイメージしてみましょう。

☑軽い運動を続けられている自分をほめて「できる」自分を認めましょう。

「準備」から「実行」へ:運動を継続する

☑簡単・普通・困難のレベル別の活動リストを作り、結果を記録しましょう。

☑周囲に運動の継続を宣言し、自ら運動を意識づける仕掛けを作りましょう。

☑雨の日など運動ができない状況でも、代わりになる室内運動を行いましょう。

「実行」から「維持」へ:運動を止めない工夫をする

☑ これまでのプロセスを振り返り、「できる」自信を強く意識しましょう。

☑運動習慣を妨げる要因を予測し、その回避策を考えておきましょう。

☑運動を行ってきたことによる身体の変化(恩恵)を再確認しましょう。

サイクリング自体を楽しむことがステージUPへの近道

たとえばダイエットのために運動をはじめる人は、「マイナス5kg」といった目標を設定し、達成するべく努力をします。目標到達のためにただ頑張るのは義務感が募り、ストレスを抱えやすい状態に。目的指向で頑張るのは不快感を伴いますが、行動そのものを楽しむと続けやすくなるのです。

通勤サイクリングでも、「毎日〇㎞走る」「×時間は必ず走る」といった目的指向ではなく、サイクリングそのものに集中する「行動指向」の方が、意欲的に長く取り組めます。風を切る爽快感や、乗り物との一体感が得られる自転車運動は、運動そのものを楽しむという点ではピッタリ。サイクリング自体が持つ楽しさに意識を向けて、通勤をポジティブな時間に変えていくことが、ステージをあげる近道なのかもしれません。