「アポの時間に間に合わない!ちょっと走っただけなのに息があがる……」

「たまには階段を使ってみよう。あれ?3階だけど上りきるのツライかも…」

実は、30歳を超えた頃から体力が下降線をたどることはデータにも明らかです。「昔のように動けない」問題をクリアにする一番の近道はやっぱり運動。今回は身体を支える「大腰筋」と、ペダリングで得られる運動効果をご紹介します。

若いうちから筋肉を蓄えておくことが大切

人間の身体は、筋肉と脂肪が体重の約6割を占めています。若いうちはたとえ筋肉量が少なくても、脂肪量も少ないのであまり問題視されません。ですが筋肉量が少ないまま年をとるとどうなるのでしょうか。

年を重ねても、若い頃のようにパワフルに働きたい。瞬発力があり、芯のあるブレない身体であり続けるためには?

およそ40代を境に脂肪は増え、筋肉量は減少していきます。特にふくらはぎや太もも、お尻などの立っているときによく使う「抗重力筋」と、瞬間的に力を発揮する「速筋線維(そっきんせんい)」という筋細胞の減少が目立ち、老化を加速させる可能性があります。たとえば20代なのに60代レベルの筋肉量や体力しかない人がそのまま年をとったら、他の人よりも早く老化が進んでしまうでしょう。

▶骨格筋の生理学を専門とする佐々木 一茂先生の解説はこちらから。

 →「美しさのカギは「痩せ」より「筋肉」!?

カラダの大黒柱。「大腰筋」

「人は足から老化する」と言われるほど、しっかり “歩ける” 身体を維持することはとても重要です。身体を支えているのは、下肢の筋肉とともに腰の脊柱と太ももの大腿骨をつなぐ大腰筋という筋肉です。

大腰筋は上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉で、足を踏み出すために膝を引き上げる動作を司っています。

大腰筋を鍛えためるには、膝を引き上げる筋力トレーニングが必要です。

ただ、日頃から運動習慣がない人にとって、いきなりキツイ運動を取り入れるのは抵抗があるかもしれませんね。それなら通勤サイクリングで大腰筋を鍛えてみるのはどうでしょうか。実は自転車のペダリング運動には想像以上の効果があるのです。

ペダリング運動の脚の動きは、階段一段飛ばしと同じ!

階段を上るときの脚の動きをイメージしてみてください。大腰筋に直接アプローチしているのは「膝を引き上げる動作」です。実は自転車におけるペダリング運動も、この動作と同様の動きをしているのです。

上記の図にあるように、股関節が深く曲がり、膝を引き上げる動作で大腰筋を使っており、直径で約33センチの円運動をしていることになります。

自転車は座っているためラクに感じますが、その動きは階段を一段飛ばしているのと同様なのです。

自転車通勤で「いつのまにか脚筋力アップ」

老化は足からと言われるように、まずは大腰筋とともに脚筋力の向上に取り掛かりましょう。下半身は全身の筋肉の約7割を占め、筋トレの基礎となります。自転車運動は下半身を大きく動かす運動であり、脚筋力アップに効果的です。

大腰筋と下肢をしっかり鍛えるためのポイントは3つ。

・平坦な道よりも坂道を上る

・いつもより1段小さなギアにする

・膝の引き上げを意識してペダリングを行う

これらを通勤サイクリングで実践すると、大腰筋と下肢が効果的に鍛えられます。ここからは、大腰筋を動かすポイントとなる「膝の引き上げ」について具体的に考えてみましょう。

引き上げる感覚を“意識する”だけでも効果あり

普段は左右の脚を交互に「踏み下ろす」感覚で漕いでいると思いますが、引き足時こそ、最も大腰筋を動かせるタイミング。

足がペダルに固定されていないと実際の引き上げはできませんが、「引き上げる感覚を意識して」脚を回すことが大切。太ももを高く上げることを意識しながらペダルを回すことも有効です。

いつものペダリングに、太ももを高くあげて「引き上げる」イメージをプラスしてみよう。

自転車で脚を鍛えるステップ「サドル高」「時間と頻度」「坂道」とは?負荷を調整することで筋力アップを!詳細はこちらでチェック。

 →「自転車通勤で大腰筋を鍛える。ロコモよ、さらば

行きはラクに、帰りはトレーニング目線で。

日常における階段の上り下りや歩行といった生活活動に加え、たまには息が上がるくらいの少しキツめの運動を取り入れておくことで筋肉は鍛えられていきます。

通勤サイクリングでも、朝は軽いペダリングで軽快に出勤できたら、帰りはトレーニング目線で自転車を漕いでみてはいかがでしょう? もちろん大切なのは、継続すること。無理なく続けられる通勤サイクリングで、「動けるカラダ」づくりの後押しをしてあげては。