5月4日、厚生労働省による新型コロナウィルス感染症対策の専門家会議で「新しい生活様式」が提唱されました。以下は、その中の公共交通機関の利用についての項目です。

〈公共交通機関の利用〉

会話は控えめに

混んでいる時間帯は避けて

徒歩や自転車利用も併用する

“3密“を避けるための移動手段として通勤に自転車を使う動きが出てきています。もちろんそれが一番の理由ですが、普段から適度な運動を心がけ、免疫力を高め健康を維持することの重要性に気づかれた方も多いと思います。この自転車、実は新型コロナ対策はもとより、それ以外にもメリットの多い乗りものです。 “自転車運動のもたらす効果”から、自転車が身体にも社会にもフィットする理由を見直してみましょう。


自転車運動がいい理由

「健康」とはいったい何でしょうか。単に病気でない状態というだけでなく、前向きになれる心身のコンディションを維持し、社会との関わりによって自身が刺激や発見、成長機会を得られる生活を送ることが、本当の意味での「健康」ではないかと考えます。

この「身体(カラダ)」「精神(ココロ)」「社会」の3つの健康の実現に貢献できるのが自転車。代表的な有酸素運動のひとつとして、身体への効果をはじめ、メンタル面の健康への働きかけについても近年解明が進んでいます。もちろん移動手段としてだけでなく、地域を巡り深堀りすることで人との関係づくりに生かせる、いつでも立ち止まって会話ができる、というメリットもあります。

この先、私たちの生活がどんどん「ラクに」「快適に」「便利に」なっていく中で、自分の力で進む自転車の健康価値が今、あらためて見直されています。

誰でもできる。いつでもできる。というのが自転車運動の大きな特徴です。

自転車に乗った経験のある人は多く、特別なテクニックを必要としないというハードルの低さが「やってみよう」という気持ちを後押しします。そして「運動する時間がない」という人には電車やクルマによる日頃の移動手段を自転車に変えるだけで習慣的な運動の機会に。

下のグラフの上位3つの運動を阻害する要因をすべて覆すことができ、忙しくてもいつもの生活習慣を維持しながら、年齢や体力を問わず、“誰でも”手軽に取り入れられるという現代人に適した運動法です。

健康づくりが必要な社会

運動不足は死因の上位ながら、働く世代ほど運動が習慣になっていません。健康長寿の実現のためには運動習慣の定着が不可欠です。では実際、健康づくりに取り組めているのかを以下のデータから考察します。


日本で死亡決定因子の3位に上っているのが「運動不足」。そして スポーツ実施率を見ると30~50代の働く世代ほど運動習慣が少ない傾向にあります。「忙しくて運動をする時間が取れない」「仕事や人間関係でストレスを抱えがち」という状況が見て取れ、この世代の多忙な人に手軽に取り入れられる運動習慣が求められていると言えます。

自転車運動がココロにもいい理由

自転車とウォーキング、同じペースでそれぞれ30分間行っているときに気分がどう変化するのかを確認したのがこの実験データで、ペース130は自転車では速こぎ、ウォーキングでは速歩きに相当します。その結果自転車は、「やや快」~「快」の間を持続する一方で、ウォーキングでは「どちらでもない」から「やや不快」へと気分が下がっていくことが確認されました。これは、自転車運動は移動スピードが速いために、「より速く景色が変わること」「風を受けて爽快感が持続すること」が大きな要因だと考えられます。

さらに、自転車通勤をした日としなかった日で、出社時や帰宅時にどのような気分状態になっているかを調査。2ヵ月間、出社前と出社後、退社前と帰宅後の1日4回気分状態を評価する指標を用いてデータを収集し、自転車通勤時と電車などを利用した通勤時の気分を比較しました。

その結果、自転車通勤 をしたときは、出社後も帰宅後も、イキイキしながらもリラックスしている活動に適した理想的な気分状態になっている一方、自転車以外での通勤では出社時にやる気がなく、帰宅時もぐったりした状態に。自転車通勤時は出社時も帰宅時も前向きな気持ちが維持される傾向にあり、良い精神状態を保ちやすいと言えます。

その他にも自転車運動後は、労働生産性や脳のパフォーマンスが上がるということもわかっています。詳しくはコチラ→Vol.39「はたらく脳」Vol.43自転車通勤ではじめる「脳活」

まずは5kmを目安に

片道5km程度の距離をバスや電車などの公共交通機関で移動している場合、それを自転車に変えてみるのはどうでしょう。

5kmにかかる所要時間は平均速度10~15kmであれば20~30分程度と無理のない時間です。自転車は自宅からダイレクトに出発でき、渋滞や遅延もほとんど起こらないため、公共交通機関を使うよりも所要時間が安定し、短縮することもあるでしょう。また、満員電車やバスから解放されるので、移動時間がリフレッシュタイムに。

ひとつ注意してほしいことは、「なるべく事故を起こさないように注意する」こと。新型コロナウィルス感染症により、地域によっては医療現場が長期にわたり、ひっ迫する可能性が示唆されているからです。ヘルメットの装着や、交通ルールを守ることを徹底し、安全運転をこころがけましょう。

いつもと違う春に戸惑うことだらけの春ですが、ひとりひとりが新型コロナウィルス感染症予防対策を徹底し、自らだけでなく、大切な人を守れるよう、社会全体で「新しい生活様式」にシフトしていきましょう。

マインドスイッチでは、自転車や自転車通勤による健康的で豊かなくらしを実現するための情報をこれからも皆様にお届けしてまいります。