世界中の人が健康だけでなく、当たり前の日常の尊さを感じるようになり、何を目的にどう生きるかという価値観も変わってきているこの頃。お金や社会的地位があれば幸せという、かつての価値観は変わり、健康や愛情、自由がもたらす幸せを多くの人が望むようになっているようです。そこで、今回のテーマは「幸福」。幸福学研究の第一人者である慶應義塾大学大学院の前野先生にお話を伺いました。

そもそも幸せって?

内閣府による生活満足度と一人あたり実質GDP(国内総生産)の推移を見ると、GDPは1981年から2000年代にかけて右肩上がりの上昇をたどり、日本人の生活は年代を追うごとに豊かになっていることがわかります。しかし、生活満足度はGDPに比例せず、横ばい傾向にあることが下のグラフから分かります。

下の図にあるように、所得や社会的地位などを「地位財」、健康や愛情などを「非地位財」と分類されています。これらのデータから、所得や社会的地位がダイレクトに幸福につながるものではないことがわかります。この「地位財」は、他者との比較によって満足するもので、幸福感が長続きしにくい傾向があります。つまり、幸せを感じる尺度が外部にあるということになります。その一方で「非地位財」は、その基準が個人に委ねられており、他者と比較できるものではないことから、幸福感が長続きしやすいと考えられます。

幸せにつながる4つの因子

前野先生は、1,500人へのアンケート結果をもとに因子分析を行い、その結果から幸福に影響する要因を4つの因子として体系化しました。

「自己実現と成長」因子

一言で表すと「やってみよう」という因子。自分の個性を社会で生かしながら、「やりたい・なりたい」をかなえていき、充実感のある成長を得ることを表しています。お金や地位を目標にせずに、自分を社会の中で成長させることで幸せを得ていくというものです。

「つながりと感謝」因子

つながりについてはいろいろな職業・年齢・性格の友人がいる人の方が、そうでない人よりも幸せという傾向があります。また、社会貢献活動に関わっている人の幸福度が高いという内閣府の調査結果もあり、誰かのために何かをする関係づくりが、幸せとして自分に返ってくるのだと考えられます。

「前向きと楽観」因子

楽観的で気持ちの切り替えが上手く、外向的で出来事をポジティブに解釈するなど、どんな状況にも最終的には「なんとかなる」と感じられる方が幸福という考えです。怒りやイライラに支配されそうになったら、自分が置かれている状況を客観的に見つめ、感情の原因にどう対処するかを考えると、気持ちが切り替わりやすくなります。

「独立とマイペース」因子

自分は自分と考え、他の人がしていることは気にせず、目標に向かって淡々と進めていくこと。これを実現するには、自分の軸を明確にして、誰にでも心を開くことのできるオープンマインドが重要になります。恥ずかしさにとらわれず、自ら楽しもう、面白がろう、やる気を出そうと率先して取り組んでいくことで、自分らしいやり方を確立できます。

自転車がもたらす幸せ

では幸せな気分を主体的につくるために、自転車はどう役立つのでしょうか?下の図は、自転車をこぐペース(ペダル回転数)の違いによる印象分布です。

自転車をこぐペースが速いほど“おもしろい”、“ワクワクする”“充実した”というポジティブな印象が得られることが分かります。このような気分になりやすいのは、自転車のスピードによる爽快感やリフレッシュ感が瞬間的な印象として残りやすいことが影響していると推測されます。自分の時間にポジティブな感情がわく時間を作ることは幸せの近道かもしれません。

健康や愛情、自由などの「非地位財」は他者と比較できるものではない、つまり幸せの尺度を自分の基準で設定できる事が幸福感につながるポイントです。季節の変化を感じたり、自然を愛でる気持ちが自ら湧いてくるような感度をもつことも、幸福への近道です。

目まぐるしく状況が変わる慌ただしい世の中、少し立ち止まって、その時々の「いま」をぜひ自転車で感じてみませんか?

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